夏夜

雨の降る夜に傘もささず歩き回ると、自分と自然が一体化したような気分になった。 ずっと昔の時代からこの惑星を循環し続ける水と、そこに染み付いた世界の記憶、その重さが皮膚を通して身体の内側に入り込んでくる。自分が自分でなくなるような感覚。全てに…

滲出

あなたが涙を流した時に、私は綺麗だと思ってしまうかもしれない。 一雫の中に納めてしまうにはあまりにも大きすぎる感情に、憧憬を抱いてしまう。 あなたが血を流した時に、私は美しいと思ってしまうかもしれない。 鮮烈な赤が染み込んだその身体を想像して…

私とわたし

私の名前は生です、またの名を死と。 私はわたしの体に、わたしの命に、わたしと共に。 私の名前は愛です、またの名を憎悪と。 私はわたしの心に、わたしの魂に、わたしと共に。 私の名前は喜びです、またの名を悲しみと。 私はわたしの生活に、わたしの日常…