透明な光3

雪が降った。しんしんと。たった一粒、手のひらに冷たさ残して消えた。

雪が光った。キラキラと。たった一粒、手のひらに冷たさ残して消えた。

 

長い旅の果ては、案外くだらないものかもしれない。駅のホームは多くの人で埋め尽くされていたけれど、その集合の正確な重さを計ることはできなかった。一粒の雪、一粒の命、その重さ。

 

小さな雪の粒は降り積もって景色を変えた。日々は積み重なって、いつしか年月となった。

 

暗雲、祈り、立ち止まれば、許されるか。足は重く、肺は冷えていた。向かうか、逃げるか。明日と昨日は今日とは別人のように振る舞う。

 

息を吐く、白く輝く、魂、エネルギー、思想、神はあっけなく霧散。青白く輝いて美しいと思った。

 

雪を蓄えた街路樹、真っ白な桜の木、いつかの春、2人は世界の中心にいた。風に吹かれ、川に落ちた花、幾つもの流れ。僕は『悲しい』と言った。「君」は笑っていた。

 

移ろう季節の真ん中、何もかもが刹那的に感じた、それに火をつけて燃やす、一瞬の昇華、時間は瞬くような美へ。全てを理解することは能わずとも、全てを感じることはできた。

 

世界の中心は、世界の果てと繋がっていた。

 

降り積もる雪よ、全てを包み隠してくれないか。日々の憂鬱、希望、絶望、感じたくなかったもの、喜び、悲しみ、考えたくなかったこと。過去と未来。心までも真っ白に染まる。