エッセイ

透明な光4

「君」はよく泣いた、そして笑った。 『全ての感情は、根源を共にする。喜びは悲しみを内包する、悲しみは喜びを持っている。絶望するからこそ、希望を感じることができるように。』 世界は美しいと言って、健気に笑うことができたら。僕は失うことを恐れた…

透明な光3

雪が降った。しんしんと。たった一粒、手のひらに冷たさ残して消えた。 雪が光った。キラキラと。たった一粒、手のひらに冷たさ残して消えた。 長い旅の果ては、案外くだらないものかもしれない。駅のホームは多くの人で埋め尽くされていたけれど、その集合…

透明な光2

無機質なビルが痛々しく突き刺さり、その狭間に埋められた種子。あれは悲しみだ。日陰に育つ、人が生きるという感情の再生産。皆がこぞって水をやるから、花が咲いた。とても綺麗に。 流した涙が、流した血が落ちて、そこに芽吹いた感情を愛と名付けた。彼女…

透明な光 1

射し込んだ光で居場所はなくなった。暗闇が僕にとっての光だった。埃の舞う部屋に現れた階段は、天国への階段か、ヴィア・ドロローサか。世界のどこかで、何かが終わる音。 乾いた喉に、唾を飲む音は感傷的な響き、不規則に反射した。それだけだった。 一息…

夏夜

雨の降る夜に傘もささず歩き回ると、自分と自然が一体化したような気分になった。 ずっと昔の時代からこの惑星を循環し続ける水と、そこに染み付いた世界の記憶、その重さが皮膚を通して身体の内側に入り込んでくる。自分が自分でなくなるような感覚。全てに…