2023-10-01から1ヶ月間の記事一覧

透明な光3

雪が降った。しんしんと。たった一粒、手のひらに冷たさ残して消えた。 雪が光った。キラキラと。たった一粒、手のひらに冷たさ残して消えた。 長い旅の果ては、案外くだらないものかもしれない。駅のホームは多くの人で埋め尽くされていたけれど、その集合…

透明な光2

無機質なビルが痛々しく突き刺さり、その狭間に埋められた種子。あれは悲しみだ。日陰に育つ、人が生きるという感情の再生産。皆がこぞって水をやるから、花が咲いた。とても綺麗に。 流した涙が、流した血が落ちて、そこに芽吹いた感情を愛と名付けた。彼女…

透明な光 1

射し込んだ光で居場所はなくなった。暗闇が僕にとっての光だった。埃の舞う部屋に現れた階段は、天国への階段か、ヴィア・ドロローサか。世界のどこかで、何かが終わる音。 乾いた喉に、唾を飲む音は感傷的な響き、不規則に反射した。それだけだった。 一息…